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第9回紛争解決手続代理業務試験問題 [特定社労士]

試験が終わった後、コピーをもらって、帰宅し速攻でOCRで読み取って、文章を起こしました。
急いでいるため、認識エラーもあると思いますが、概略という意味でご覧ください。


ここでは、第1問のみ

【事件の概要】
海外の取引先からクレーム処理案件も多くなり、高度の技術管理的対応が急務となったY社に、職業紹介事業者を通じて求人募集をしていたところ、Xを紹介された。履歴、職務経歴を見る限り、直前の勤務のA社では海外のクレーム処理を担当しており、その前のB社では海外勤務であった。これらの経歴から、就業規則には試用期間の定めがあるところ、ただし書規定により、いきなり本採用したが、翻訳などできず、本人は真剣に取り組む態度をみせなかったこと理由に、試用期間満了のタイミングで解雇(普通解雇)とされた。

【考え方】
Xが地位を特定して雇用したにもかかわらず、翻訳できない勤務態度に問題があると主張するY社。これに対して、一般の中途採用であると主張するX。解雇事由に該当するものの、解雇の相当性(解雇権濫用法理)が問われることになる事件です。


第1問 別紙1、2記載の各「言い分」に基づき、以下の(1)から(4)までに答えなさい。

小問(1) 本件についで、Xの主張に基づいてY社による9月30日付の解雇を争い、特定社会保険労務土としてXを代理して都道府県労働局長にあっせん申請をするとして、当事者間の権利関係を踏まえて記載するとした場合の「求めるあっせんの内容」はどのようになりますか。解答用紙第1欄に箇条書きで記載しなさい。(ただし、賞与、遅延損害金の請求は記載しないでよい。)

小問(2) 特定社会保険労務士として、Y社を代理して、Y社の行ったXに対する本件解雇は有効であると主張する場合、その主張を基礎づける項目として5項目(例えば、「Xは業務命令に反して反抗的態度をとったこと。」等)を解答用紙第2欄に①、②といった簡潔な箇条書きで記載しなさい。

小問(3) 特定社会保険労務士として、Xを代理して、Y社の行ったXに対する本件解原は無効であると主張する場合、その主張を基礎づける項目として5項目(例えば、「本件兼業勤務については上司の承認を受けていること。」等)を解答用紙第3欄に①、②といった簡潔な箇条書きで記載しなさい。

小問(4) Xの代理人である特定社会保険労務士として、本件事案について、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づく「あっせん手続」において、本件紛争の法的見通しを考察し、それを踏まえ解決を図るとした場合、どのような内容による解決が妥当と考えますか。これについて、解答用紙第4欄に「①考察した見通し」を200字以内、「②解決の方向」を250宇以内で、それぞれ記載しなさい。




別紙1
〔Y社の言い分〕
1.私は、Y社の取締役人事部長です。当社は、従業員300名あまりの機械メーカーで、食品加工用の機械の分野では海外を含め知名度の高い企業です。しかしながら、最近は品質管理に関し、国内はもとより海外の取引先からのクレーム処理事案も多くなり、高度の技術管理的対応が求められるようになっています。
 そこで、本社技術管理部においては、海外課の主任として英語の能力、品質管理の知識・経験を有する人材が支給必要となり、職業紹介会社を通じて募集していたところ、Xを紹介されました。提出履歴書によりますと、Xは43歳で、直近の職歴は大手電機メーカーのA社に平成19年4月から平成24年3月までの5年間在籍し、A社入社前はシンガポールの米国系Bコンサルタント会社で1年6カ月勤務とありました。採用面接では、A社を希望退職募集に応じて退職したが、同社では電子部品関係の海外のクレーム処理を担当していたということであり、B社でも英語を使う仕事をしていたとのことでした。そこで、Xは英語能力も十分と考え、当社としては願ってもない人材と判断して本年(平成25年)4月1日付で採用しました。

2.本来は、中途採用者でも就業規則の定めるところにより、試用期間を適用するのですが、即戦力として必要な人材でしたので、就業規則の「新たに雇用された者は6カ月間を試用期間とする。ただし、会社が特に認めた者には適用しない。」とのただし書を適用して、試用期間を適用せず、直ちに技術管理課の主任として、本採用しました。賃金は月額40万円、海外主任手当2万5000円、家族手当1万円、通勤手当5000円、住宅手当2万円としました。一般社員の同年齢者は、基本給35万円程度以下で、他の部署の主任手当は1万円ですが、海外主任は専門的な仕事なので、高額としました。賃金のうち、定額給与は毎月1日から末日分を当月25日払い、残業手当等は翌月25日払いとしています。

3.Xについて、当社に慣れてもらう目的と、品質管理やクレーム対応のため、基礎的な機械の製造・組立・検査工程の体験が必要なため、当初3カ月間は、工場で工場長付として勤務してもらいました。ところが、工場長がスケジュールを組んで実習体験を命じたのですが、積極に習得しようとはず、お座なりな態度でした。そこで、勤務態度につき注意をした上で、7月1日からは本社技術管理部で海外課の主任として勤務させました。

4.ところが、7月10日ころ海外取引先より、代理店を通じたクレーム報告書が送られてきましたので、これを至急日本語に翻訳するように命じたとこころ、出来上がったものは会社の名前からして間違っており、機械名、部品名、不具合の状況等といった肝心の部分を訳さなかったり、誤訳しており、全く使用できないもので、係長のCに命じて再度翻訳させました。これは、社内報告書に類する簡易なものでしたが、基本的な英語能力がないのかと驚きました。そこで、1カ月間は部長のEが作成していた「工場英語マニュアル」や過去のクレーム関係の報告書や必要な機械名、部品名等について勉強させました。

5.そして、8月初め頃、海外代理店に送付する食品殺菌加工機械の仕様書の英訳を命じました。これも業界としては一般的なものですが、中々進まず、機械の部品、機材、仕様や殺菌関係の衛生用語の英訳がよくわからないからというばかりで、残業してでも勉強して仕上げようという意欲がなく、時間がかかるばかりでした。本件は、急ぐ案件でしたので、次長のDが休日出勤などをして処理しました。前述のように、この1カ月間、機械、部品、機能、食品衛生関係等の日本名、英語訳等について、勉強するように指示していましたが、本人は真剣に取り組む態度をみせませんでした。そして、残業は一切せず、定時退社しています。何よりも当社のような中小企業では全員が力を合わせることが、第一なのですから、このような独善的態度が目立ち、職場のモラルダウンも招いています。

6.また、8月20日頃、来年度の海外顧客用のカレンダーの作成を命じました。その作成のため、プロジェクトを組み、現場の者との意見交換や打合せなどを指示したのですが、本人は積極的に関係担当者とのコミュニケーションをとらず、このままでは時間的に間に合わないので外注しました。Xは対人関係が苦手なようで、職場でもほかの社員とあまり会話せず、協調性に欠けて意思疎通ができません.クレーム処理には、人間関係的な面も大事なのですが、これでは不適格です。

7.Xには、A社での電子部品関係の海外クレーム処理を担当していた経歴や、B社で勤務していた語学力を期待して、技術管理部の海外課主任として採用したのです。しかし、A社では海外クレーム処理担当ではなく、また、B社ではアルバイト勤務と分かりました。そして、前述のとおり、基本的な英語能力に不足し、当社製品の機械等についての理解も不十分で、業務への取り組みも真剣さに欠けており、他の社員とのコミュニケーションがとれず、不適格性が明らかなので、これ以上Xを雇用しておくことは他の社員との関係でも許されず、ちょうど本来の試用期間の満了する9月末日付で、解雇予告手当を支払い、解雇した次第です。

8.当社就業規則では、解雇事由として、「業務上の知識、技能、能率が著しく劣り、将来の改善の見込みがないとき」、「勤務意欲、協調性等に欠け、従業員として不適格なとき」、また、懲戒解雇事由として、「重要な経歴を偽り、雇い入れられたとき。」と定めています。
 また、Xを技術管理部の海外担当の主任として特約して雇用したことは、職業紹介会社への、「技術管理部の海外担当募集」と特定した募集書類の記載からも明らかですし、入社の際、「海外課主任」と明示した辞令も渡し、本人もこれを了承しています。
 当社として、前述の状況から、Xを初めから必要な英語能力やA社でのクレーム処理の経験があり、適任であると信用して、英語力等のテストなどをせず本採用してしまったのが間違いでした。
9.E部長が、1年くらい経たないと一人前にならないと言ったかもしれませんが、それは基本的な知識、能力があることや積極的な業務意欲、習得態度のあることを前提にしたことで、Xは全く基礎的な能力や勤務意欲を欠くので問題外の話で、将来の改善も全く見込めないため、解雇はやむを得ません。


別紙2
〔Xの言い分〕

1.私は、本年(平成25年)4月1日、Y社に採用され、本社技術管理部海外課に配属されました。職業紹介会社を通じて採用されましたが、技術管理部の海外主任として採用されていません。
また、募集書類はみましたが、「技術管理部の海外担当」と記載されているだけで、面接においても詳しい仕事の話はありませんでした。採用の際、「海外課主任」との辞令は受けましたが、労働条件等の文書交付はなく、雇用契約書などの文書も取り交わしていませんので、一般的な中途採用者の取扱いと思っていました。採用面接の際、技術管理部長のEさんは、「1年くらい経たないと一人前にはならないので、その間しっかり勉強して欲しい。あなたのような海外経験のある英語ができる人が我が社のような中小企業に就職し
てくれて有難い、どうか長く働いて欲しい」といわれていました。そして試用期間は適用せず、直ちに本採用とすると言われましたので、業務上の知識、能力等の習得のために長期間要するための例外ではないかと思っていました。

2.私は、英語能力はありますが、何しろ食品加工用の機械関係については初めてで、部品も多くて、機械、性能、仕様等については専門的な事柄ですから、3カ月の工場で実習したからといって、クレーム報告書の翻訳は機械の仕様書の英訳等は無理であり、そのことはY社も分かっていたはずです。何よりも食品加工用機械の性質上、カビや細菌などの衛生対策、肉や果実など加工原材料の素材毎の特質等、多様な専門用語があり、習得に1年間は十分かかります。

3.したがって、私は9月末日付をもって解雇されましたが、これを納得することはできません。会社は、7月のクレーム報告書の日本語訳が不十分であったといっていますが、私なりに必死に取り組みました。しかし、食品加工機械という分野は初めてで、専門的な用語ばかりですから、入社3カ月余りでは到底無理な仕事でした。

4.8月初めの食品殺菌加工機械についての仕様書の英訳についても、同じであり、私なりに一生懸命対応していたところ、期日が迫っているから間に合わないといって、次長のDが「自分でやるからもうよい」といって私から取り上げて処理したものです。入社以降、機械や部品の名称、仕様等について私なりに勉強しておりますが、慣れない仕事であり、機械工学・食品衛生等の英語で、業界特有の呼び名もあり、一人前の仕事を直ちにやれといわれても無理で、少なくともE部長が言われたように一人前になるのは1年はかかります。したがって、技術管理部の海外担当といっても、直ちにY社に長年勤務している人のような業務処理能力を要求されるものではないと思います。

5.また、8月20日頃からの来年度の海外顧客用のカレンダー作成プロジェクトの立ち上げを命ぜられましたが、全く未経験で大変重要な仕事で、各部門に関係するものなのに、E部長に尋ねても具体的な方針は示されず、例年どおりやればよいというばかりでした。じたがって、私なりに各部門の担当者に聞いて、プロジェクト案を一応作成しましたが、これでは時期的に間に合わないからとE部長が外注してしまいました。

6.技術管理部は、E部長の下にD次長、主任の私と係長のCに係員2名という構成ですが、私を主任としたのは、年齢的な序列関係だと思っていますし、主任の業務や権限といったものは何の定めもなく、業務内容についても説明は受けていませんので、部下や他の社員との協調性に欠けているといわれても、これらがはっきりしていないので無理です。
私は前歴として、A社で電子部品関係の海外クレーム処理を担当しでいたとは言っていません。電子部品の「在庫管理」とはっきり履歴書には書いており、面接にあたって、A社での仕事の内容についてはほとんど聞かれず、職業紹介会社の人が、勝手にそのような電子部品の海外クレーム処理の仕事をしていたと言ったのではないでしょうか。また、B社についても、「米国系コンサルタント会社勤務」と書き、アルバイトとは書きませんでしたが、採用面接では、この点についても何も聞かれませんでした。仕事の内容などを聞かれたらアルバイト勤務であったと当然言っています。

7.E部長より、少なくとも1年くらい経験しないと一人前にならないと言われ採用されもかかわらず、急に難しい仕事を連続して命ぜられ、その結果が不十分だから期待された業務遂行能力がないから解雇すると言われても私としては不本意です。就業規則も「将来の改善の見込みがないとき」とあるとおり、業務の性質上、仕事に慣れるまで、長期的に見てほしいと思います。
 また、私が残業しないで定時退社することなどが、職場のモラルダウンになっているといわれますが、むしろ残業しないで定時退社するのが当たり前で、A社の工場で製品在庫管理を担当していたときも同様でした。しかし、私としては、残業を命ぜられたら拒否はいたしませんが、実際に残業は命ぜられていません。他の社員とも協調して海外用のカレンダーのプロジェクト案も作りました。

8.このように、私は一生懸命業務に取り組んでおり、早く一人前になろうとしているのに、上司が急がせ、私を無能呼ばわりするのです。私に試用期間を適用しなかったのは、会社の考え方からであり、主任として採用したのも会社側であり、応募書類にも主任としての地位の特定はありませんでした。入社にあたって、十分に業務の内容や必要な知識、能力等について説明をしないでおいて、勝手に能力・知識等がないといわれることも心外です。試用期間の適用のない採用なのに、試用期間的な扱いをして入社わずか6カ月で解雇することは、それ自体として不当と考えます。
 私としては、食品加工用機械については、食材とメカニックの結合で興味がありますので、今後もY社で勤務を続けたいと思います。




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