判例の歩き方(読み方) [特定社労士]
グループ検討課題第2「配転命令の有効性」は、ケンウッド事件(最3小判平成12年1月28日)そのものだと思います。と教えていただきました。
ということで、早速「ケンウッド事件」を検索してみました。
ヒットしたのは全基連さんの判例集から
https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/07405.html
ここの判例集は、信頼度めちゃ高なのですが、最初から最後まで改行されてないので、読みづらいので、コピペして細工ます。Wordないしメモ緒に貼り付けてた際に「。」の後で改行するとめっちゃ読みやすくなります。
まずは、「事案概要」を読んでどのような事件なのか読み取ります。
配転命令を受けたXさん、転勤すると3歳の幼児の保育園送迎ができなくなり、家庭生活も破壊されるとしてこれを拒否し、長期間(36日間)出勤しなかったため停職処分を受け、後に懲戒解雇されたケース
確かに、事例第2に似ています。ケンウッド事件では、36日間出勤しなかった。事例2では、セクハラ申告したことを理由に配転命令を出した(不当な目的があることを主張しています)。
本来、セクハラがあった場合、セクハラをした側を懲戒処分と併せて、他の場所に移動させるのが普通ですやん。何しとんねん、事例2の会社 と思うのは、おきらく社労士でありますが…
① こういう場合は、配転命令を業務命令として発する根拠があるか、そこから確認します。
判例集には、〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕とあるでしょ(^_-)-☆
② 次に、権利濫用法理を確認します。
右事実関係等の下においては、被上告人は、個別的同意なしに上告人に対しいずれも東京都内に所在する企画室から八王子事業所への転勤を命じて労務の提供を求める権限を有するものというべきである。
もっとも、転勤命令権を濫用することが許されないことはいうまでもないところであるが、転勤命令は、業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても不当な動機・目的をもってされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合でない限りは、権利の濫用になるものではないというべきである(最高裁昭和五九年(オ)第一三一八号同六一年七月一四日第二小法廷判決・裁判集(民事)一四八号二八一頁参照)。
本件の場合は、前記事実関係等によれば、~
まず、「。」の後に改行して読みやすくしています。
赤字の後ろのかっこ書(太字)の部分を注目します。これが、参照した判例なのです。引用しているのは東亜ペイント事件です。
そこにこう書いているわけです…
【東亜ペイント事件】
使用者は業務上の必要に応じ、その裁量により労働者の勤務場所を決定することができるものというべきであるが、転勤、特に転居を伴う転勤は、一般に、労働者の生活関係に少なからぬ影響を与えずにはおかないから、使用者の転勤命令権は無制約に行使することができるものではなく、これを濫用することの許されないことはいうまでもないところ、
当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合
又は業務上の必要性が存する場合であっても、
当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき
若しくは 労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、
特段の事情の存する場合でない限りは、当該転勤命令は権利の濫用になるものではないというべきである。
ね、一緒でしょ(^_-)-☆
これを、簡単な図説にすると、受験ノートの76ページの図になります。
ケンウッド事件の「~」以下が、この事件の判示した部分になります。
本件異動命令には業務上の必要性があり、これが不当な動機・目的をもってされたものとはいえない。また、これによって上告人が負うことになる不利益は、必ずしも小さくはないが、なお通常甘受すべき程度を著しく超えるとまではいえない。←つまり、配転命令は有効(通常受忍できる範囲内であった)
したがって、他に特段の事情のうかがわれない本件においては、本件異動命令が権利の濫用に当たるとはいえないと解するのが相当である。
本件異動命令に従わなかったことを理由としてされた本件各懲戒処分には、所論の違法はないものというべきである。←業務命令に従わず、長期間(36日間)出勤しなかったため停職処分を受けたことも、当然の処分であると結論付けた。
元の判決文を全部読んだわけではないので、停職処分までは有効、その後の解雇はどうなったのか微妙
じゃ、元の設例第2なのですが、question では、権利濫用法理の要素と、権利濫用を主張できる事実(配転命令無効)と原処分が有効である事実(配転命令有効)を当事者の言い分からピックアップしろということになります。
(注)本事例では、Xは本件配転命令は、セクハラを申告した制裁で不当な目的だと言っていますが、Y社は懲戒処分には至っていないので、配転命令が有効なのか無効なのかというだけの問題なのです。
であれば、ケンウッド事件は、直球で権利濫用となる場合を判決文で書いていますが、元の東亜ペイント事件では、「~出ない限り、OK」というワンクッション置いた書き方になっています。
これは、引用元の判決分を、後からの判決文(特に下級審)はわかりやすい言い方をするので、そちらを読む方は、自然と入ってくのは事実なのです。どちらを読むかは、お好きな方を…というおきらく社労士です
ただし、枝葉末節…の部分ですやん。ケンウッド事件では、配転命令を不服として36日欠勤してるわけでしょ。配転命令が無効であれば、次は36日も欠勤したはどうなんだという判断に移るわけです。
配転命令が有効だと、38日欠勤は停職処分は有効(36日以上だから)かもしれないけど、じゃ30日だと停職処分は有効ではないかもしれないのです(判示は変わるかもしれない)。
判決に引きずられるなというのはこういうことなのです。
条件が変われば、判示内容も変わるのです
紛争解決手続代理業務試験の第1問の場合、最近は論点が2つあります。
第15回試験は、整理解雇と有期労働契約期間途中の解雇(民法628条/労働契約法17条)
第14回試験は、錯誤と退職の意思表示の有効性(民法95条・97条・540条)
第13回試験は、労働契約法19条1号と2号の解釈
第12回試験は、詐欺又は強迫と出向+能力不足(民法96条/労働契約法14条)
これを、1つずつ、有効か無効か判断して、1つでも無効であると判断されたら、原処分は無効になる公算が高くなります(取消しの場合は取消の意思表示が必要ですが)。それを、それぞれの判例に基づいて考えることになります。
それぞれの項目を学習したいなら、労働政策研究・研修機構の労働事件のページを読めば詳しく書いてあります。そこと読むだけで、判例法理のポイントもわかるはずです。
中央発信講義では、これらの根拠のお話をしていました。
もし、ケンウッド事件を引用するなら、
配転の権利濫用法理は、前段の囲み赤字の~
判示は、後段の囲みの青い字の部分、「配転命令拒否による、(36日間の欠勤は)懲戒処分相当」ということになります。
普通に考えたら、36日も欠勤するなんてありえないわけで、解雇もありだったのかもしれません。
文字通り判例を音読(黙読でしょうけど)するのは、読んでいないのと同じ、判例を読むということは、「法律趣旨、過去の判例を参照している部分を、問題の事件の事実にどうあてはめているの?」を読み取り、それをどう斟酌して判示したのかを理解するということです。
字面を読んでも、それは判決を物語のようにしか追っていないと同じだと思います。
なんかまた、つまらないこと書いちゃったな…(´っ・ω・)っ ゴメンチャイ
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2020-10-05 17:58
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