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特別研修グループ検討課題 補足的な…話1 [特定社労士]

特別研修のグループ検討課題の補足的なもので、参照すべき判例や通達などまとめています。

補足的な話1では、
起案例1 あっせん申請書・答弁書ひな形について
■□グループ検討課題第3 懲戒解雇と退職金請求
設例1 申請書起案用(普通解雇)
設例2 答弁書起案用(時間外手当請求)

を、残りのグループ検討課題1・2・4・5は、この次に…


起案例1 あっせん申請書・答弁書ひな形について
この事件は設例3の事件の、あっせん申請書とその答弁書になります。

この事件は、海外事業部長職にあるXが、
①Y社の承認を得ず個人の会社を設立し、Y社の競合会社であるB工業との取引をY社に届け出ることなく行ったこと
②Y社の管理する預金を横領した疑いがあること
③平成29年12月25日に正当な理由なく欠勤したこと

を理由に、Y社から、平成29年12月25日出社したところ、解雇通知書を交付されたものです。このとき、Xに

④弁明する機会もなんら与えられず、直ちに会社から私物を片付けて退去するように命じられ
⑤解雇予告手当も支払われず

懲戒解雇された事件です。

①~⑤の事実が中心線で、紛争解決手続代理業務試験の第1問小問(2)(3)として考えるなら、
Y社の代理人としては主張すべきは①~③、④⑤はXの主張に対する反論
Xの代理人としては主張すべきは④⑤、①~③はY社の主張に対する反論

を当事者の言い分より探すことになります。

具体的には……
・Y社就業規則には、懲戒の種類及びその事由の定めがあるのか
・Xの言動の何が、懲戒事由に該当したのか、その事実は真正(しんせい)なのか
・Xを直ちに労働関係から排除しなければならないほどの状況に至っているのか
・Y社のとった懲戒解雇手続に問題はないのか

などを考えることになります。

順番は前後しますが、検討課題第3へ

■□グループ検討課題第3 懲戒解雇と退職金請求
Q1 本件懲戒解雇では、解雇予告もされず解雇予告手当の支払いもない状況で、解雇の有効性について
Q2 懲戒解雇の意思表示を行うにあたり、労働基準監督署長の認定を受けていないが、このような場合でも、懲戒解雇の意思表示は有効か

A1・2 民法の観点から解除権を行使するときは、当事者の一方に、契約上又は法律(民法541条(履行遅滞等による解除権)、542条(定期行為の履行遅滞による解除権)、543条(履行不能による解除権等)上の解除権があって、相手方に意思表示することで、効力を有します。

であれば、原則としてQ1の解雇は有効(労働基準法では、解雇予告なしに解雇することを無効であるとはどこにも書かれていません)です。しかし、原因となった懲戒処分、懲戒解雇が、労働契約法15条や16条に違反している場合には、原処分が無効と判断されます。

参照法律 民法540条、労働基準法20条1項・114条、労働契約法15条・16条


Q3 懲戒解雇後の調査で、懲戒当時とは異なる事実の認識するに至っているが、この認識した事実を懲戒解雇の理由として主張することができるか
A3 山口観光事件を参照してください。
https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/06857.html
受験ノート:懲戒処分の争点…[3]あっせん事件の論点>2.懲戒処分>(2)懲戒処分の争点  紙P.23


Q4 退職金請求はできるか
A4 小田急電鉄事件を参照してください。
https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/90010.html
受験ノート:退職金の減額…[3]あっせん事件の論点>2.懲戒処分>(3)退職金の不支給  紙P.27



設例1 申請書起案用(普通解雇)
小問(1)自宅待機命令の有効性について

読売新聞社事件 東京高決S33.8.2 労民集9-5-831
http://www.jil.go.jp/hanrei/conts/043.html
労働者は使用者の指揮命令に従って一定の労務を提供する義務を負担し、使用者はこれに対して一定の賃金を支払う義務を負担するのが、その最も基本的な法律関係であるから、労働者の就労請求権について労働契約等に特別の定めがある場合又は業務の性質上労働者が労務の提供について 特別の合理的な利益を有する場合 を除いて、一般的には労働者は就労請求権を有するものでないと解するのを相当とする。

〔要約〕自宅待機命令は、使用者の有する一般的な指揮監督権に基づく労働力の処分の一態様であり、業務命令の一種である。
労働者には、労働する義務が課せられているが、(使用者がその受領を拒否するのであれば)労働者は就労させと主張する権利はない。

その他参照裁判例
四天王寺国際仏教大学事件 大阪高判決H1.2.8 昭和63年(ラ)502号
http://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/04002.html
受験ノート:自宅待機…[3]あっせん事件の論点>3.懲戒解雇>(2)自宅待機と出勤停止  紙P.25


小問(2)自宅待機中の賃金の減額について
日通名古屋製鉄作業所事件 名古屋地H3.7.22 昭和54年(ワ)835号、昭和54年(ワ)1380号、昭和60年(ワ)2673号
https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/05775.html
自宅謹慎(いわゆる自宅待機命令)は、それ自体として懲戒的性質を有するものではなく、当面の職場秩序維持の観点から執られる一種の職務命令とみるべきものであるから、使用者は当然にその間の賃金支払い義務を免れるものではない。


小問(3)能力不足などを理由とする解雇の場合どのような点が考慮されるか、労働契約法16条の要件を確認して、判例における解雇権濫用法理の充足について検討せよ。
また、評価根拠事実と評価障害事実という要件事実を意識しつつ、事実を拾い上げて主張を整理しなさい。
 ※ また以下の部分が、第1問小問(2)(3)の演習となります。
受験ノート:普通解雇(能力不足等)…[3]あっせん事件の論点>4.普通解雇>(2)能力不足・勤務態度不良による普通解雇  紙P.30


小問(4)会社に対する損害賠償を行えるとする根拠
受験ノート:精神疾患…[3]あっせん事件の論点>13.傷病休職>(7)心理的負荷による精神障害の認定基準  紙P.76
受験ノート:損害賠償…[3]あっせん事件の論点>17.損害賠償・慰謝料請求  紙P.82

民法709条において、「相手方の故意又は過失がより、保護されるべき自分の利益を侵害・遺失した」というのが、709条の規定により損害賠償請求が行える要件になります。

このため、保護されるべき自分の利益を侵害された・遺失させられたと訴える(主張)する側が、故意・過失であったことを立証しなければなりません。

そして、715条の使用者責任を問う場合には、①利益を侵害・遺失させた相手方を使用している者に対して、②使用者としての相当の注意を怠った(相当の注意をしていれば損害が生じなかった)ことについて、立証しなければ使用者責任は問えません(陳述書の中で、何が故意や過失に該当するのか、それはどう立証するのか、そして、加害者の使用者が、当然行うべき注意を怠っていたという点を意識して読み返してください)。

もし、会社の安全配慮義務違反(労働契約法5条違反)を主張するのであれば、債務不履行(民法415条)による請求となります。こちらの場合は、単に履行すべき債務を履行していないことが請求できる要件になります。

参照法律 民法415条・536条・709条・710条・715条
なじみのない法律ですから、解釈等は Wikibooks などを読むとわかりやすいと思います。

小問(5)あっせん申請書起案(省略)
小問(6)考えられる和解条項の検討
考え方として、本件事件が裁判であればどのような判決が出るのかということを考えてください。
本件では損害賠償を請求するのですから、訴える側は損害額(算定の根拠)を立証する必要があります。

また、不法行為による損害賠償の場合は過失相殺(任意規定)を考慮して和解金を算定しますから、過失相殺すべき金額と根拠を考えてください(この金額であれば和解できるかという点)。
なお、債務履行による損害賠償の場合は、必ず過失相殺を考慮しなければなりません。
小問(6)は、紛争解決手続代理業務試験第1問小問(5)の内容に相当します。




設例2 答弁書起案用(時間外手当請求)
この事件に関しては、ここ(時間外・休日手当の支払い=定額制残業代)を一読してから、事件の陳述を読んで行くとよいでしょう。
http://www.mhlw.go.jp/churoi/chyousei_jirei/dl/16.pdf

小問(1)労働基準法上の労働時間の概念とY社の立場で反論する場合、そのような事実関係を拾い上げるのか
受験ノート:労働時間…[3]あっせん事件の論点>10.未払いの割増賃金>(2)労働時間・休憩時間  紙P.57

これら判例の労働時間の考え方に基づいて、Xの主張する労働時間が使用者の指揮命令下の置かれていたのか、又は労働から完全に離れることが保障されたという点があったのかを、当事者のあっせん申請書、陳述の中よりピックアップすることになります(この点を意識して、よく読んでください)。

労働時間概念にかかる判例
三菱重工業長崎造船所事件 最一小判H12.3.9 民集54-3-801
http://www.jil.go.jp/hanrei/conts/024.html
大星ビル管理事件 最一小判平14.2.28 民集56-2-361


小問(2)1日11時間、週48時間労働することを予定する定めは許されるか、また、労働時間の基礎単価の計算方法はどのように考えるのか

ここは、プロですから賃金計算ですから省略します[わーい(嬉しい顔)]
ポイントは、Y社は、週に40時間超えた部分=各日の3時間=は26日/月で算定しているものの、木曜日を起算日にした1週間で、40時間を超える水曜日の8時間に対して確信的に割増賃金を支払っていないということになります。


小問(3)労働基準法41条2号該当者の定義
これは、次の2つのリンク先(厚労省のリーフレット・通達)を参照してください。これで解答できるはずです。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/dl/kanri.pdf
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/09/dl/h0909-2a.pdf
受験ノート:定額制残業代…[3]あっせん事件の論点>10-2.管理監督者  紙P.64


小問(4)定額制残業代が労働基準法37条違反にならないというためにはどのような要件が必要か、またY社の固定時間外手当の有効性に関してどのように主張するのかについて
受験ノート:定額制残業代…[3]あっせん事件の論点>10-1.定額制割増賃金  紙P.61

判例要旨では
①当事者間に、基本給に定額制残業代が含まれているという合意(認識がある=若しくは周知している)があること
②労働基準法37条に定める計算方法で計算された額以上の割増賃金を支払っていれば、必ずしも同条に定める計算方法によらなくても違反にはならない(実際の残業代が定額制残業代を超える場合はその差額を支払うことに、労使間に合意があるか、少なくともそういった制度が確立していること)。
③割増賃金とそれ以外の賃金が明確に区別(確認)できること

以下の参照すべき裁判例は必ず確認のこと
参照すべき裁判例 関西ソニー販売事件(大阪地S63.10.26=受験判例集P.147))・三好屋商店事件(東京地S63.5.27)・国際情報産業事件(東京地H3.8.27=受験判例集P.148)・創栄コンサルタント事件(大阪地H14.5.17)

アクティリンク事件も別の意味で参照しておくとよいでしょう


小問(5)~(7)はグループ内で検討してください。
ちょっとマニアな主張をすると、小問(5)の電子メールですがメールのヘッダーを解析すれば、どこのIP(形態等であれば基地局)から発信されたものか判断できますが、一般的に、発信したのがどこであるか立証するのはXなので、それが、本当のことか、会社で終わった後どこか、ムフフなことをした後にメールしたのか、この中では立証されていないことになります。しかし、設問から考えるとその点も考察する必要があります。

小問(7)は、考え方として、本件事件が裁判であればどのような判決が出るのかということから、考えてください。これらの点から、どのような条件で和解(両当事者が納得できる解決策)できるかを考えましょう。小問(7)は、紛争解決手続代理業務試験第1問小問(5)の内容に相当します。







ここまでお読み頂きましてありがとうございました。(*- -)(*_ _)ペコリ

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