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再雇用賃金下げ違法(東京地裁) [社労士のお仕事]

昨日、朝日新聞のニュースをTwitterで流したのですけど

同じ業務で定年後再雇用、賃金差別は違法 東京地裁判決
賃金を下げた分、労働密度を下げるとかの緩和策を講じないと、負け筋を走るよね(;´・ω・) ‪#‎okiraku_sr_com‬

産経新聞のほうがわかりやすく書かれていたのでこっちを参照しようかなと
http://www.sankei.com/affairs/news/160513/afr1605130027-n1.html
リンク先は、適当な時期に消えるので、新聞記事も貼り付けておきますけど…

写真 2016-05-14 8 31 27.jpg




ネット記事では、「正社員と嘱託社員で職務内容や配置変更(転勤)の範囲、責任の度合いに違いがないのに、賃金額が異なるのは不当だ」だけなんですけど

記事で、判例を引用している部分がここ…
コスト増大を避けつつ高齢者の雇用を確保するために、再雇用後の賃金を下げること自体は合理的

再雇用を理由に賃金を下げることは、容認しているのですけど、さらに続く
仕事内容が同じ場合は賃金格差があってはならない

この場合の、「仕事内容」とは同一労働同一賃金的なものではなく、再雇用前の仕事の内容と再雇用後の仕事の内容を比べているわけであります。

さらに。
ネット記事のほうが、わかりかりやすく書かれてます。こっちは、「佐々木裁判長は『会社の経営状況は悪くなく、賃金を抑える合理性はなかった』『再雇用が年金までのつなぎだとしても、嘱託社員の賃金を下げる理由にはならない』と指摘した」とあるんすけど…

前段には異議なしで、不利益変更をする場合の一番最初の理由が、労働条件を引き下げなければならないほどの重要な理由に該当するか=新聞記事には、「人件費圧縮は必要な状況ではなかった」とことを書いているので、ネット記事の『』の冒頭ににちこっと書き加えると、もっとわかりやすくなるんですなぁ。

ちょっと、2つ目の『』は、裁判長に対してツッコミ入れたくなるのですが…主張した弁護士かな?? 記事を書いた記者さんかな???

現在、60歳台前半の老齢厚生年金が65歳に向けて支給開始年齢を繰下げているわけで。シャロ牛さんや勉強されている方はわかるはずなのですが、

一部の例外があるのですが、60歳台前半の老齢厚生年金を受けられる人では、昭和29年4月2日以後に生まれた女性と昭和24年4月1日以後に生まれた人は、原則定額部分がない報酬比例部分のみの一部年金しか支給されません。
そして、昭和36年4月2日以後に生まれた男性、昭和41年4月2日以後に生まれた女性は65歳から老齢基礎年金+老齢厚生年金というスタイルになるわけで、「年金までのつなぎ」と言ってしまうと、アバウトすぎる感があるんですなぁ[モバQ]

  因みに、受給要件を満たしているのが前提であります[わーい(嬉しい顔)]


定年の定めは60歳でもOK。でも、65歳までは従業員が望めば絶対に雇用しなければならないので、高齢者の賃金をどうするかは、マジ会社ではめっちゃ頭が痛い問題であるはずです。

給与が30万円程度賞与なしであれば、給与を20万前後まで引き下げても、月額の年金額が10万円程度あれば、何とか高年齢雇用継続給付を組合せて、従前の可処分所得は確保できるけど…

そうでない場合、例えば40万円以上の給与があると、可処分所得は下がってしまうから取扱注意なんだよね[ふらふら]

こういう場合、労働密度を下げる、時間短縮するという措置を講じないと、今回みたいな事件になってしまうのであります。

裁判所は、高年齢雇用継続給付金を受ける(賃金を低下させること)については、一応の評価をしているという点と、労働条件引き下げの要件を満たせよという点…この2点を維持できれば問題なしと、この裁判例では言っているのであります。

そこのところを、間違えないように読んで欲しいのです。




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コメント 2

のんき社員

分かりやすい記事ですが
問題の本質は、仕事に対する対価を、現役社員であれ再雇用であれ、正しく評価して賃金を決めれば問題は無いはずですね。
強いて言えば、仕事をしないあるいは、出来ない社員には、60歳までに給与水準を下げていないといかない訳です。
一方で、まじめに60歳まで仕事をして稼せげている労働者なら、60歳を過ぎたからと言ってパフォーマンスが極端に落ちるはずがありませんから、再雇用であれ極端な賃下げは当然ながら違法です。

仕事が出来ようが出来まいが、60歳を超えれば賃下げをしても良いような日本の風潮が違法性を発現したわけですね。
今回の判決に対して、社労士業界は不満気味ですが、労働に対して正しい評価と賃金を払う労使関係の構築を考え直す良い機会となったのでは無いでしょうか。

なお、上の記事で書かれていますが、「高年齢雇用継続給付金を受ける(賃金を低下させること)については、一応の評価をしているという点」についても、解雇を盾にとった交渉ではなく、労使が対等に交渉した結果、体力的あるいは、何らかの合意の結果、賃金が急激に下がり過ぎることがある。その場合に給付金による支援が役に立つというふうに理解すべきだと思うんですね。

そもそも、労働のパフォーマンスが落ちることを想定しないで、給付を前提に賃金水準を設定するというのは本末転倒で、そういうことをすれば、企業の代わりに国民が賃金を払っていることになる訳で、企業が不労所得を得ていると言わざるを得無い訳です。そんなことのために税金を払っているのではありません。

そもそも、日本の企業も、既に60歳定年まで高級を払い続けている時代ではなく、40歳代から業績評価を大きく取り入れるようになっている企業も少なくないはずです。
なので、再雇用だからと言って業務内容に関係なく減額されることに何の合理性も無いし、再雇用だからと言って経営上のやむを得ない事由も無く、解雇を盾にパフォーマンスの低い仕事を押し付けて減額することも違法だろうと思います。

今回の判決は、極めて当たり前の結果で、我が国の社労士業界などが、企業に対していかに理不尽で不合理な経営指導をしていたか思い知る機会になったと思います。

今後、この手の裁判は、爆増し、再雇用の就業規則の是正がなされていくでしょう。
私は、某企業で再雇用に関する就業規則の改定に関わった経験から、社労士の指導の考え方に疑問を持ち続けた経験があります。今回の判決に注目し、会社の対応に備える者です。
企業は、最終ステージに立った方々との信頼関係を大事にしなければならないし、例え、社労士が合法だと勧めても、非道な社会通念に踊らされてはならないと考えています。
by のんき社員 (2016-06-02 04:17) 

おきらく社労士

私も、「60歳になったから給料を下げられる」という考え方は、おかしいと思っています。

例えば、40万円以上給与+賞与が出ている人は、給与を下げて高年齢雇用継続給付+できるだけ年金を年金を満額でもらうことを前提にいした場合、年間収入を基準に考えるとガクンと落ち込みます。それをするのは酷でしょう。ほかの社労士さんの考え方はどうかわからないですよ。でも、私の考えかたでは・・・

60歳定年制だから、一部年金が出るまでは現状で再雇用する。一部年金が出れば、年金の分だけは下げていいかな? その分仕事の内容は、従業員の持っているノウハウを後任の若い人たちに教えてもらう。もちろん就労密度もさげる(主に製造業なんで)。

こういう風な考え方をしています。団塊の世代が65歳になるまで安定した雇用という点を考えれば、どうしても給与額を押さえなければ、若い世代へ再配分できないという事実もあります。そこは、会社の考え方なので、いくら進言していても、社長が決めればそれ以上の口を挟めないことのほうが多いのも事実です。

のんき社員さんの会社は、比較的大きくしっかりされた会社だと文面から読み取れるのですが、「40歳代から業績評価を大きく取り入れるようになっている企業も少なくないはずです」、それは、人事評価ができる会社だからできるのであって、大半の会社ができているとは思えません。

結論は、今後はこの判決のような考え方をしなければ、その取決めは無効になるということです。この間も、会社の総務さん達に話していたのですが、「●●ありき」の考え方は危険です。会社も労働契約に基づき信義誠実の原則を裏切らないようにしてくださいと話していました。

とりとめもなく、お返事していますが…


by おきらく社労士 (2016-06-02 07:55) 

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